ドクター・ドレーの目に止まったケンドリック・ラマー
人々の心に訴えかけるような巧みなリリックスで多くのリスナーからプロップスを得る、今をときめく注目のヒップホップ・スター。
1987年6月カリフォルニア州コンプトン生まれ。幼少期、コンプトンでの激しいギャングストリート生活の経験を子供ながらにストーリーに綴り、危険に囲まれた生活の中で見つけたことを伝えたいとラッパーとして活動し始める。K-Dot(ケー・ドット)というラッパー名の元、インディーズ時代には数々のミックステープシリーズをリリースし、ヒップホップ界スーパープロデューサーDr.Dre(ドクター・ドレー)の目に止まるほど印象の強いラッパーであった。ケンドリック・ラマーのメジャーデビューアルバム『good kid, m.A.A.d City』(グッドキッド・マッドシティー)は、リスナー達に感銘を与え、彼の独特の世界観は多くの人たちに賞賛される。2015年にリリースしたアルバム『To Pimp a Butterfly』(トゥ・ピンプ・バタフライ)はグラミー賞五冠獲得し、地元コンプトンから市の名誉賞『Key to Compton』を授与され、オバマ米大統領さえも、彼のメッセージ性や活動に直接面談したいとホワイトハウスに招待し、讃えるほどであった。

ケンドリック・ラマーの独特な世界観は、彼の幼少期の経験から創りあげられてきたものだと言っても過言ではない。ケンドリック・ラマーの父は、悪名高いギャングと関わっていたため、家族は身を隠すためにシカゴからコンプトンに引っ越すことになる。1980年、West Coastでのギャングの勢いが活発になり、危険な環境の中育った。しかし、彼はその環境から悪影響を受けず、自我が目覚める。幼少時からポエムやストーリー、そしてリリックスを綴る能筆な優等生だったという。家族や周りはヴァイオレンスなストリート生活から影響を受ける中、ケンドリック・ラマーは子供ながらに鋭い観察力を持っていた。その後、ケンドリック・ラマーはケー・ドットという名でラッパーとして活動を始める。16歳の頃に、彼のルーツ、南カルフォルニアでの経験を描いたミックステープ『Youngest Head Nigga in Charge』(ヤンゲスト・ヘッド・ニガ・インチャージ)をリリースする。
彼のアイディアは十分に、カリフォルニアで支持されていたインディペンデントレーベルTop Dawg Entertainment(トップ・ドッグ・エンターテイメント)とレコード契約を出来るレベルだった。そしてカリフォルニアで同じく人気であるラッパー、Jay Rock(ジェイ ・ロック)、Ab-Soul(アブソウル)、Schoolboy Q(スクールボーイ・キュー)らと、ミックステープ『Training Day』(2005) と 『C4』(2009)をリリース。ケンドリック・ラマーは彼らと共にそれぞれのラッパー性を融合させたグループBlack Hippy(ブラック・ヒッピー)としてもパフォーマンスを繰り広げた。
ケンドリック・ラマーの才能を高く評価するドクター・ドレー
2010年、ケンドリック・ラマーは正式にケー・ドットではなく本名であるケンドリック・ラマーとして活動をし始める。そして4枚目のミックステープ『Overly Dedicated』(オーバリー・デディケイテッド)をリリース。同じ年、初のフルアルバム『Section.80』(セクション・エイティ)をTop Dawg Entertainmentの元、独占的にiTunesでリリース。ケンドリック・ラマーはその後も作品を作り続け、ツアーを回り、数々のトップアーティストYoung Jeezy(ヤング ・ジージー)、The Game(ゲーム)、Talib Kweli(タリブ・クウェリ)、Busta Rhymes (バスタ・ライムズ)、Lil Wayne(リル・ウェイン)らとのコラボレーションを果たす。ヒップホップ界最も影響的なプロデューサーとして尊敬されるドクター・ドレーは、ケンドリック・ラマーの才能を高く評価し、ビジネス・音楽面と様々なフィールドで彼を右腕とし、ケンドリック・ラマーにとってのメンターとなる。
ヒップホップ界で知名度も上がる中、ケンドリック・ラマーはドクター・ドレーのオファーによりTop Dawg Entertainmentのベンチャー企業でもある、Aftermath Entertainment(アフターマス・エンターテイメント)と契約を交わす。Aftermath Entertainmentに所属し、メジャーとしてのプロモーションやセールスを機に、彼のアーティストしてのキャリアはさらに向上。幼少期から知覚力の鋭い優等生だった彼は、ヒップホップ界のスターとしてその名を広める。

2012年秋に期待されリリースされたデビューアルバム『good kid, m.A.A.d City』は、大絶賛となる。アルバムに含まれるヒットシングル「Swimming Pools (Drank)」(スイミング・プールズ) 「Poetic Justice」(ポエティック・ジャスティス)は彼のラッパーとしての才能を明らかにし、アメリカテレビ番組Saturday Night Live(サタデーナイトライブ)や Late Night(レイトナイト)でのプロモーションの機会を得る。彼のリスナーはハードコアなヒップホップリスナーだけではなく、幅広い層のファンを魅了させた。
もちろんケンドリック・ラマーの勢いはそれだけでは収まらなかった。興味をそそり、現代の社会の中で人々を考えさせる彼の鋭いリリックスはヒップホップ界の音楽評論家やMTVの目に止まり『2012年最もイケてるラッパー』として讃えられる。ケンドリック・ラマーは他にもタイトルを持ち、人気のラッパーLil Wayne(リル・ウェイン)、Jay-Z (ジェイ・ジー)、Kanye West(カニエ・ウェスト)らと肩を並べた。
数々のアーティストとフューチャリングを重ねるケンドリック・ラマー
さらにケンドリック・ラマーは、Drake(ドレイク)、J. Cole (ジェイコール)、Big Sean(ビッグショーン)など、数々のアーティストとフューチャリングを重ねる。現代のアメリカ社会の、人種問題や警察による暴力など、議論を引き起こすような内容の彼のリリックス、サンプリングトラックはヒップホップ全盛期・クラシックヒップエラを思い出せるような『Hip-hop’s Newest old-school star』と名付けらるほど『ヒップホップ新生のオールドスクールスター』な彼の独特のセンスで人々にインパクトを与える。
2015年、Bilal(ビラル)、Snoop Dogg(スヌープ・ドッグ)、Pharrell Williams(ファレル・ウィイアムズ)などをゲストに含むアルバム『To Pimp a Butterfly』(トゥ・ピンプ・バタフライ)をリリース。58回目のグラミー賞の受賞式では、11部門ノミネートという過去のグラミー史上マイケルジャクソンが12部門にノミネートされたのに続く。トゥ・ピンプ・バタフライは最優秀ラップ・アルバム賞を授賞し、「Alright」(オーライ)が最優秀ラップ・ソングと最優秀ラップ・パフォーマンスの2冠、同じくアルバム収録曲の「These Wall」(ジーズ・ウォール)は最優秀ラップ最優秀ラップ・歌唱コラボレーションに選ばれ、ラップ部門を完全に制覇した。
2016年3月にリリースされた「untitled unmastered」(アンタイトルド・アンマスタード)はトゥ・ピンプ・バタフライを製作中にリリースしなかった作品のデモで、米ビルボードチャート2週連続1位に輝いた。
ヒップホップ界のニュースター・ケンドリック・ラマー。ヒップホップ界だけではなく、アメリカ社会にも影響を与える彼のパワフルなリーダーシップは、さらにこれから目を離せないであろう。