ナイジェリアをルーツに持ち、ロンドンで生まれ、ロンドンで育ったラッパー、リトル・シムズ。
彼女の音楽との歩みを辿っていくと、9歳まで遡る。女子校で演劇やダンスを学ぶ傍、日々の出来事をノートに綴り、それをラップとして披露していたという。そして、16歳頃から楽曲を制作し始め、20歳の時に発表した無料EP『AGE 101』で脚光を浴びる。その一年後となる2015年にデビューアルバムとなる『A Curious Tale of Trails + Persons』をリリースし、AIMアワードで年間最優秀アルバム賞を受賞。さらには、ジャイルス・ピーターソン主催の「Worldwide Aword」でブレイクスルーアーティストオブザイヤーも受賞し、一躍トップスターの仲間入りを果たした。
2016年には、米経済誌フォーブスに「30歳以下の欧州で活躍するアーティスト」として選ばれた彼女は、ケンドリック・ラマーから「いまこのシーンで最も優れたラッパー」と賞賛を受け、アンダーソン・パークやゴリラズ、そして彼女の憧れでもあったローリン・ヒルなどのツアーに同行するなど、錚々たるアーティストたちを魅了している。
そして、彼女の3作目となるアルバム『GREY Area』は、発売前からメディア、早耳リスナー、ファッション界など各方面から注目を集め、先行曲だった「Selfish ft. Cleo Sol」は発売前から大ヒット。NMEのアルバムレビューでは5点満点を獲得した。
Little Simzを語る上で外せないアルバム『GREY Area』
この『GREY Area』は、今までのアルバムと大きく違う点がひとつある。彼女は、これまでアルバムを制作する時に、一枚全てを特定のプロデューサーとタッグを組み、作ってきたことがなかった。しかし、この『GREY Area』は、彼女が幼い頃から家族ぐるみで付き合いがあったというロンドンのプロデューサー、インフローが全曲をプロデュース。
複数のプロデューサーと、ひとつひとつの音を作りあげてきたこれまでと違い、気心知れたプロデューサと作った一枚は、アルバム自体に一貫性とストーリーを生み、今までと一味違う作品となった。
また、このアルバムには、サンダーキャット、リトル・ドラゴン、クロニックス、マイケル・キヌアワーカーなど、まさに”今”の音楽シーンを作り上げているアーティストたちが参加し、華を添えた。彼女のこれからの活動において、この『GREY Area』は彼女を語る上で外せない一枚となるだろう。