実験的なサウンド・アートに挑戦しつづけるコレクティブ
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『BASICAとMadkosmosがコラボシングル「灯」を発表』
連絡のあったインフォメーションは、必ず音源は聴くようにしているので、視聴から「灯」をチェック。自然や鳥のさえずりの音に交じり、研ぎ澄まされたサウンドが1分程続き、その後突如始まる巧みなラップで圧倒される。1分30秒から始まる不安定なビートの中に、和を感じさせるサンプリングを折り込み、必要のない音を極限まで削ぎ落としたそのセンスの高さ、そして職人でいうところの「匠」を感じることができた。
4人組からなるBASICA。
録音からミックス、撮影、編集、配信、デザイン、プロモーション、マーケティングまで、全てを自分たちで行うインディペンデントなスタイルで活動。
彼らのリリースしている作品、映像を全てチェック。2017年にJ-WAVEの坂本龍一氏による音楽プログラムRADIO SAKAMOTOで「蓮」という曲が紹介されたり、DJ KRUSH氏がBASICAの曲を数曲DJでプレイしている映像が、SNSで拡散されるなどジワジワとBASICAの音楽が広がりつつある。
今週末にはDJ KRUSH氏が出演するイベントにもラインナップとして入っているので、イベント前にBASICAにインタビューを敢行。メンバーの中から、Gleam Grimmを中心に、ELIM(上記写真)、ATSUKIの3名に質問に答えてもらった。
BASICAとはどのようなチームなのですか? 具体的に教えて下さい。
Gleam Grimm:MCとミュージックビデオのディレクターELIMと、ビートメイカー/プロデューサーのATSUKI、そして、ビートメイカーとデザインやパブリシティーなどを担当するGleam Grimm、撮影補助やMV出演もしているJESUS YAMAZAKIの4人でBASICAというコレクティブとして活動しています。
チームではなくコレクティブなのですね。
Gleam Grimm:ライブではELIMとATSUKIで出演することが多いのですが、広告やデザインなども含め全部自分達でやるっていう方針で、裏方も含めてBASICAで、それがバンドではなくコレクティブと名乗っている理由でもあります。
BASICAはいつから活動されているのですか?
Gleam Grimm:元々はELIMと一緒にダブ・バンドをやっていたのですが、メンバーの脱退などもあり2人になったときに、トラックでやってみようという話になって、元々の知り合いで旧バンドのメンバーだった事もあるJESUS YAMAZAKIの3人で、2015年にBASICAとして始動しました。当時は自分がベースを弾いて、JESUS YAMAZAKIが巨大な十字架を背負って練り歩くようなパフォーマンスをしていました。
プロデューサーのATSUKIさんのことも教えて下さい。
Gleam Grimm:ATSUKIさんはMAMMOTH DUBというクルーで活動していて、Soundcroudで音だけは知ってて、カッコよくて勝手にファンだったのですが、当時出演していたライブハウスにATSUKIさんも出演してることを知って、店長だった現City Your CityのTPさんに紹介してもらって対バンしたのがきっかけです。
そのようなきっかけなのですね。
Gleam Grimm: 2017年に「蓮」という曲を一緒に作ってRADIO SAKAMOTO(J-WAVEの坂本龍一による音楽プログラム)などで紹介いただいたり、ライブでも反応が良く、2018年にBASICAに加わることになりました。
その後、メインの活動の場がライブハウスからクラブに変わっていって、ライブもクラブに適応した現在の布陣に徐々に変わっていきました。ATSUKIさんはプロデュースワークも盛んで、Jin Dogg、TYOSiN等のトラップ系のヒップホップアーティストのビートメイクも手掛けたりしています。木村太一監督のショートフィルム「Mu」でも、ビートをプロデュースしたJin Dogg「壊(DESTROY)」が使用されました。
先月にGREEN ASSASSIN DOLLARさんとの曲「MILKY WAY」をリリースされていますが、リリースに至った経緯を教えて下さい。
Gleam Grimm:ELIMの友達に「オヤジ」と呼ばれている方がいて、色々なラッパーやアーティストが集まって来るのですが、そこでELIMがお会いして。ATSUKIさんも元々インスタのDMでやりとりしていて、GAD(GREEN ASSASSIN DOLLAR)さんが盛岡からこっちに来ているタイミングでオヤジ君のところで初めてお会いしました。
後日、ELIMがGADさんからビートをいただいて、聴いた瞬間に映像が浮かぶようなカッコいいビートだったのでミュージックビデオも含めて一つの作品として仕上げました。今回だけではなく、近日中にGADさんとの新しいコラボ曲もリリースする予定です。
「MILKY WAY」の映像素晴らしいですね。ELIMさんが映像作られているということですが、どこかで映像編集の経験をされたのでしょうか?
ELIM :ありがとうございます。映像編集は5年前から映画好きの友人と共に撮影から編集まで独学で始めました。
いつもどのような流れで企画から撮影、編集、アップまで行っているのですか?
ELIM:自分が書いたリリックから映像を思い浮かべ、ロケ地が決まったらリップシーンのイメージと、自分自身の現在の内情から曲とリンクするストーリーを組み立てて、BASICAのメンバーと意見を交わしながら一から撮影していきます。
映像の使用機材やソフトはどのようなものを使っていますか?
ELIM:カメラはsony α7s2でソフトはAdobe Premiereです。撮影はだいたいBASICAのメンバーであるJESUS YAMAZAKIと2人でしています。ある程度、作品が出来てきたらカメラマンの友人を交えて完成させていくのが最近の流れです。
プロデューサーMadkosmosさんはどのような方でどのようなビートを作られるのでしょうか?
Gleam Grimm:1992年生まれのプロデューサーで、トラップ・ミュージックをベースに、オリジナリティを追求した職人肌のビートを作っていて、UKのプロデューサーOZZIEとの共作の「Stay」という曲が、Soundcloudで16万再生超のヒットを記録していたり、京都で#MADWANTというイベントのオーガナイズや、UKのレーベルVeyron Archeに加入してアジアツアーを回ったりと国内外問わず勢力的に活動している人です。
そのMadkosmosさんとのコラボシングル「灯」が発表されました。今作の想いをお聞かせ下さい。
ATSUKI:Madkosmosくんとは普段からバーベキューをしたり、一緒に出かけたりとプライベートでも深い交流を持つ関係なのですが、以前から「何かをやりたいね」と話していました。
彼のオーガニックかつ、何処か懐かしさを感じさせる無国籍なトラップ・ビートの上を、共に上がっていきたいという想いを吐き出したELIMのラップと、イントロ・アウトロの民謡のようなボーカルがガッチリと融合した大作になったと思います。
制作中にスタジオでみんなで黒澤明の『夢』の狐の嫁入りを見ながら作業したり、何度も何度も書き直した箇所もあるので、とても思い入れのある作品です。深く聴き込んでくれるリスナーが増えたらいいなと思っています。
それと、ELIMがディレクションする「灯」のミュージックビデオも編集中で、近日公開予定ですので楽しみにしていてください。
マスタリングは著名作品(millennium parade、starRo、Taeyoung Boyなど様々)を各種手掛けるWax Alchemyですが、こちらでマスタリングをされている理由はありますか?
ATSUKI:以前、Wax Alchemyさんでダブプレートをカッティングした事があるのですが、仕上がった音の完成度がとても素晴らしくて、いつかまたお願いしたいと思っていました。そして今回、ミキシング過程で着地点が見えないというか、行き詰まった部分があったので、Wax Alchemyさんにお願いしてみようか?という流れになりました。

DJ KRUSHさんが出演するイベントINVITEに出演されますが、KRUSHさんとはどのようなご関係でしょうか?
ATSUKI:さっきのダブプレートの話とも繋がるのですが、ELIMが飛び込みでDJ KRUSHさんにダブプレートをお渡しした事があって、数ヶ月経ってからSNSでKRUSHさんがBASICAの曲を数曲DJでプレイしていただいている動画を見つけまして、改めてライブにご挨拶に伺ったり、楽曲へのアドバイスを頂いたりと交流させていただいてます。
無名のボクらにも暖かく接して頂いて。なによりも僕達全員がKRUSHさんのヘッズなので。ちなみにこの前の渋谷asiaでのTIGHTにて「灯」をプレイしていただきました。本当にありがたいです。
2/21のイベントINVITEの意気込みを教えて下さい。
Gleam Grimm:INVITEが行われている最中に「灯」の配信が開始されるはずなので、BASICAもMadkosmosくんも自分たちのリリパくらいの勢いで力入ってます。もちろんKRUSHさんはじめ共演も素晴らしい方々ばかりなので、単純に音楽ファンとしても楽しみです。是非ライブにもお越しください。

Madkosmos and Basica – 灯
2月22日デジタルリリース
INVITE supported by Cocalero
2020/02/21(Fri)
OPEN 23:00
ADV: 2,500yen
DOOR: 3,000yen
at CIRCUS TOKYO
DJ :
DJ KRUSH
KID DRAMA(CNVX / Exit Records / Metal Headz)
MADKOSMOS
ITTI
LIVE :
Crosby Bolani aka DigiAnalog feat dj low
BASICA