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2月5日、表参道WALL&WALLにてepistrophのアパレルライン・ローンチパーティー『BRILLIANT CORNER』が開催された。
2016年9月に表参道にオープンしたWALL&WALLは、2フロアで構成されるキャパ400人のイベントスペース。内装はシンプルでモダン、むしろ未来的とも言えるデザインである。大箱ではないが、小箱よりは広く、メインフロアは天井がとにかく高いため、コンクリート打ち放しの壁に囲まれているものの開放的な気分にさせてくれる。WONKが所属するレーベル・ブランド、epistrophのローンチ・パーティー『BRILLIANT CORNER』が開催されるということで、筆者は今回WALL&WALLに始めて足を踏み入れた。
WONKは約1年前に存在を知り、去年複数回に渡ってライブを見させてもらったが、見るたびに会場の規模がスケールアップしており、そのたびにフロアはパンパンに埋まっている。去年の9月にデビュー・アルバム『Sphere』をリリースして以降、着実にその名が浸透しつつあるようだ。epistrophは、音楽とファッションを軸にハイクオリティなライフスタイルを提案するブランドであり、今回のイベントはアパレルラインのお披露目を目的としたものであった。ショップエリアでは、epistrophの文字やロゴが入ったTシャツ、スウェットシャツ、ジャケット、トートバッグやピンなどが展示・販売されていた。アパレルのデザインはWONKのドラマーHikaru ARATAが担当しているとのこと。また、同時にVLANK CONCEPT WEARの服も販売しており、「Jazz Age」という文字がプリントされたシャツが印象的であった。


Aru-2、CRAMが唯一無二のビートを披露
パーティーの音楽面に関しては、バンドのライブにビートメイカーのビートセット、そしてDJプレイという異なる方式で音楽が提供され、聴けるジャンルも様々であった。オープンDJのFAMEがヒップホップなどをかけて場を温めたあと、最初のライブ枠がスタートし、ビートメイカーのAru-2とCRAMがそれぞれ30分間のビートセットを披露。ふたりともよくコラボレートをする仲であり、去年はヨーロッパのレーベルからコラボアルバム『Dystopia』をリリースしていた。Aru-2はソウルフルでメロウなトラックを得意とし、ときにはマイクを握り浮遊感のある歌声をトラックの上に乗せるが、CRAMは獰猛なシンセ音やバウンス感のあるトラックで、より激しいサウンドを鳴らす。ブースの前ではヘッズたちが頭を揺らし、手を挙げるが、後方の壁際には、いまいち何が行われているのかわからない、といった表情の人たちもいた。SP 404をいじるビートメイカーたちのライブを見たことがなかったのかもしれない。しかしこうして様々なタイプの人々が同じ空間を共有していることこそが、このパーティーの面白さだった。


LicaxxxがストイックなDJプレイを展開
それは次に続いたLicaxxxのDJタイムでも感じたこと。それまでヒップホップ・リズムが響いていた空間に4つ打ちビートが鳴り出したときは、ブースに向かって直立不動になってしまう客が多かったが、しばらくするとフロアの動きが増えていく。Licaxxxがヘヴィでダークなハウスからファンキー・グルーヴへと繋げていくと、ブースの目の前からフロア全体へと、踊る人々の輪が広がっていった。展示エリアで会話をしながら、無意識のうちにリズムに合わせてノッてる人たちもいたが、選曲はもちろん、Licaxxxの展開や雰囲気の作り方が成した業だろう。少々動きはぎこちないが、楽しそうに音楽に合わせて揺れる人たちは、普段はハウスやテクノを聞かないが、場のエネルギーに触発されて身体が自然と反応してしまったのかもしれない。

常田大希と石若駿の一騎打ち
1時間ほどのDJタイムをはさんで、後半のライブ枠がスタート。まずはバンド、Srv.Vinciとしても活躍している音楽家、常田大希によるソロ・プロジェクト、Daiki Tsuneta Millenium Paradeのライブが始まった。以前、WONKのメンバーが好きな同世代アーティストに常田大希の名を挙げており、対バンしたいと言っていたが、なるほど、彼が他の音楽家たちの尊敬と畏怖を集める存在である理由はライブを見るとわかる。常田大希はキーボードやMIDIコントローラーなどの機材を前にして座り、その対面には、現在日本のジャズ界を席巻している話題のドラマー、石若駿が鎮座。常田大希が鍵盤を弾いたり、サンプルをトリガーし、石若駿が手数の多いドラミングでそれに呼応する。かと思ったら、今度はドラムの横に置いてあるキーボードを石若駿が演奏し、常田大希がドラムパッドでビートを刻む。そうやって彼らは交互にパートを交代しながら、電子音とサンプル・ネタと生音を激しく衝突させ、リズムを有機的に変化させ、ジャンルと既成概念を砕いていく。演奏の合間の両者の目配せは、タイミングを合わせるためであったのだろうが、相手を試すような挑発的な視線にも見受けられた。見ているだけでハラハラする、圧巻のパフォーマンスであった。




ずば抜けたセンスと技巧で魅了したWONK
そして登場したWONK。今回はメンバー4人とサックス/フルート奏者の安藤康平という5人編成であり、KANDYTOWNよりDianも1曲に参加。WONKのライブは全く同じ内容が2回とないため、何度見ても「またこれか」という感情が沸き立たない。毎回ライブで演奏している曲というものはあるが、構成が変わっていたり、イントロが違っていたり、違う曲とつながっていたりと、見ている客の予想を裏切るのが好きな彼ららしい仕掛けが用意されているのである。そして、ライブを重ねるごとに自信が増しているようだ。ホール&オーツの「I Can’t Go For That」の極上カバーは相変わらずシビれるほどに完成度が高く、もはやWONKのオリジナルとして考えたほうが良さそう。Jディラ・メドレーが始まると、フロアのヘッズたちが大きく反応。あの場で「The Light」のサビを歌い上げるヴォーカリストKento NAGATSUKAの歌声を聴いて、鳥肌が立たなかった人のほうが少なかったのではないだろうか。





『BRILLIANT CORNER』はクールな音楽やファッションが楽しめるスタイリッシュなパーティーとなり、出演陣もそれぞれ独特の格好良さを纏っていたが、ただの「おしゃれ」な音楽とは違う独創性や芸術性のある作品づくりやパフォーマンスをするアーティストたちであった。何かのシーンに属するというよりは、自分の周辺にシーンを作ってしまうような、そんな存在感を放っていた。最後は、FAMEが流す心地良いハウスが、音楽に浸り足りない人たちの心を踊らせていた。
Words by Danny Masao Winston / Photos by Mitsugu Uehara
EVENT INFORMATION
WONK TOUR DATES
- ・2/15 (Wed) [APPLEBUM x BLUE NOTE present BLUE LOUNGE] JOSE JAMES // LOVE IN A TIME OF MADNESS Release Party @Contact, 渋谷
- ・2/19〜2/25 ヨーロッパ・ツアー (ベルリン・パリ・ロンドン)
- ・2/28 (Tue) NHK FM LIVE BEAT *公開収録ライブ @NHK みんなの広場 ふれあいホール
- 申し込みリンク: https://pid.nhk.or.jp/event/PPG0294184/index.html
- ・3/4 (Sat) TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017 ALTERNATIVE ACADEMY @WWWX w/cero,Yogee New Waves,okadada,Licaxxx etc..
- ・3/11 (Sat) OTO TO TABI 2017 @北海道 札幌芸術の森アートホール
- ・3/16 (Thu) LUCKY TAPES × WONK @ Billboard Live TOKYO DJ:FAME
- チケットリンク: http://billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=10413&shop=1
WONK HP http://www.wonk.tokyo