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Floating Pointsが初アルバム『Elaenia』をリリース
フローティング・ポインツことサム・シェパードは、先鋭的なダンス・トラックを生み出す一方で、エレクトロニック・ジャズ的なEP『Shadows』、13人編成のフローティング・ポインツ・アンサンブルでの「Post Suite / Almost in Profile」と、クラブ・ミュージックの枠に収まらない高度な音楽性、実験性を持つ作品も作る。そもそも彼はマンチェスター大聖堂の聖歌隊で歌い、音楽学校でピアノと作曲を学び、ジャズ、クラシック、現代音楽、アンビエントなどを吸収し、それを現代的なエレクトロニック・ミュージックに取り入れてきた。そんなフローティング・ポインツ初のアルバムが『Elaenia』だ。
大学進学でロンドンに出てきたシェパードは、音楽と学業を両立し、『Shadows』発表後は大学で神経科学の博士号取得を優先させた。そうした事情から『Elaenia』の完成は長引くのだが、その間もさまざまなミュージシャンと交流し、構想はどんどん膨らんだ。
「自分にとっては『Shadows』もアルバムのような作品で、だから今回の“ファースト”アルバムは、僕にとっては2作目のような感じがする。でも、今回は周りに協力してくれる人がたくさんいるから、今までの作品よりも多くの人に届くんじゃないかな。前回は大学などで時間があまりなかったし、だいたい自分で演奏していた。でも、このアルバムでは他のアーティストに楽器を演奏してもらったりして、制作プロセスで多くのことを学んだよ。すごく楽しかった」
Floating Pointsサウンドはどのように作られていくのか
彼が言うように、『Elaenia』はさまざまなミュージシャンが参加している。ドラムのハロー・スキニーことトム・スキナー(ジェイド・フォックス、メルト・ユアセルフ・ダウン、サンズ・オブ・ケメット、オウニー・シゴマ・バンド)とレオ・テイラー(ジ・インヴィジブル)、ベースのススム・ムカイ(ゾンガミン)ほか、ストリングス・セクションやヴォーカル陣という構成で、シェパード自身はピアノ、フェンダーローズ、アープ・オデッセイやモジュラー・シンセに加え、ヴィブラフォンやマリンバも演奏する。
南米に生息する鳥の名前を由来とする『Elaenia』は、『Shadows』と「Post Suite / Almost in Profile」の延長線上に位置する作品だ。
「今まで作ってきた曲の全てがこのアルバムに影響しているし、基になっている。作品を作るごとに、そこから色々と学ぶしね。“Post Suite / Almost in Profile”はよりクラシックなやり方で書いたバンド中心の作品で、『Shadows』はエレクトロニック・レコードだから、この両者は全然違う。でもそのふたつが、このアルバムではひとつに繋がった感じだね。全く違う音楽を作っているうちに、それが混ざり合うようになったというのかな。音楽的な転機はこれまでも何度もあったし、今でもあるし、これからもあると思う。新しい音楽を聴く度に、刺激を受けるんだ」
シェパードは、近年はブラジル音楽にも影響され、ジャイルス・ピーターソンの企画のソンゼイラにも参加し、たびたびブラジルを訪れている。三部構成の大作「Silhouettes」には、聖歌隊での経験とともにブラジルのノルデスチやミナス・サウンドからの影響も見出せるだろう。ほかにもアンビエントやクラウト・ロックを思わせる作品、コンテンポラリー・ジャズからサイケに通じる部分など豊かな音楽性に包まれる。ちなみに、ジャケットのアートワークにあるのは、シェパード自ら製作したハーモノグラフだ。
「美術館に行った時、たまたまハーモノグラフの展示があって、自分にもできるんじゃないかと思って色々工夫して、自分なりの機械を作ってみた。音を出すとパーカッション・サウンドに従って機械が動いて線を書く仕組みだけど、ジャケットになっているのは収録曲の“For Marmish”のサウンドで出来たアートワーク。“Silhouettes”のミュージック・ビデオでも使っているけど、音とアートワークは全て繋がっているんだ」
Words by Mitsuru Ogawa Photos by Louise Haywood-Shiefer
RELEASE INFORMATION
Floating Points 『Elaenia』

- 2015.11.04 (水)
- Beat Records
- BRC-487
- ¥2,000 (Tax excl.)
More Info: Beatink