Contents
レゲエを確立させたひとり、シンガー・ソングライターのジミー・クリフ
数々のヒット曲や、主演を務めた映画『The Harder They Come』を通じて、ボブ・マーリーよりも先にレゲエを世界に広めることに貢献した偉大な存在。しかし、彼はひとつのスタイルに停滞することなく、ポップ・ミュージックの変遷の流れに沿って新しいサウンドを取り入れていき、様々なジャンルのミュージシャンと共作し、常に自身を表現者としてアップデートしてきた。だが、いつの時代の作品でもその魂を癒すスウィートな歌声は変わらず、エネルギッシュなライブ・パフォーマンスは67歳になった今も衰えていない。そんな、ジャマイカン・ポップ・ミュージックの生き証人、ジミー・クリフが2015年4月に来日し、ビルボードライブで公演を行った。タイトなスケジュールの中、楽屋でジミー・クリフにインタビューを敢行。ジミーの燃えるような紅のシャツとジャケットは、いつまでも消えない彼の情熱と野心の炎を表しているかのようであった。
「まだまだ超えなくてはいけない河があるんだ」 ―ジミー・クリフ
――今回は3日間で6ステージをこなしています。そのエネルギーはどこから来るのでしょう?
強い精神が大事だ。それともちろん、健康を維持しないといけない。しっかりと運動をしているし、悪い食べ物は体内に入れない。そして睡眠をしっかりとる。単純だが大切なことだよ。
――長年音楽の道を歩んできたあなたですが、音楽をやり続けるモチベーションは何でしょう?
音楽だけでなくて俳優もやっているが、エンターテイメント業界で活動を続けるモチベーションは、目標だ。昔から大きな目標を沢山持っている。達成したものもあれば、まだ達成していないものもある。だからやり続けているんだ。
――まだ達成していない目標とは何でしょう?
例えば、まだ私には日本でチャートの1位を獲得したアルバムやシングルはない。あと今回のような小さな会場も悪くないが、日本にきたときにスタジアム級の会場でコンサートができるようになりたい。そういった目標がある限りやめることはない。俳優としても、まだ大ヒットした映画に出演したことはない。『The Harder They Come』などは高い評価を受けたが、スマッシュヒットとは言えないだろ? だからまだまだ“超えなくてはいけない河” (=「Many Rivers to Cross」)があるんだ。
ジミー・クリフのライブへの想い
――ライブをやっていて一番興奮するのはどういう瞬間ですか?
今回、ライブの中で新曲を2曲やった。お客さんはまるでずっと前から知っていた曲のように一緒に歌ったり盛り上がってくれた。そういうのは嬉しいね。そうやって新曲の感触を試すんだ。ライブは新曲をショーケースする場になるから本当に楽しいんだ。
――新曲は常に作っていますか?
ああ、常に作っている。まだ沢山発表していない曲があるんだ。
――日本でライブをやっていて、特に感じることはありますか?
日本でのライブはとても楽しい。そして客はしっかりと聴いてくれる。特に今日のような会場の客層は大人だからちゃんと聴いてくれるね。そして音楽を良くわかっている人達ばかりだ。音楽に対してリスペクトを持っている。
初めて来日したジャマイカ人アーティスト、ジミー・クリフ
――レゲエのパイオニアであるあなたから見て、レゲエはどのように変わったと思いますか?
自分のことを音楽と映画におけるパイオニアだと思っている。レゲエに限らずね。なぜなら、例えばロック・ミュージシャンだって私の曲を演奏する。ブルース・スプリングスティーン、ローリング・ストーンズ、ポール・サイモンといったビッグなミュージシャンだって私の曲をカバーした。R&Bやジャズのミュージシャンもね。マイルス・デイヴィスだって私の曲を演奏した。最初の映画『The Harder They Come』は映画界に大きなインパクトを与え、『Scarface』などの映画にも影響を与えた。私は確かにレゲエの創始に関わったけど、レゲエだけで覚えられたくはないんだ。
――日本はジャマイカの音楽を早くから受け入れてきたと感じますか?それともアメリカやUKの後を追うような形だったのでしょうか?
いや、日本は昔からジャマイカの音楽をサポートしてくれた。私は初めて来日したジャマイカ人アーティストだ。最初に来たときは驚いたよ。日本人は日本語を喋るのに、みんな私の歌を知っているんだ。一緒に歌ってくれてとても感激した。そして、日本でもダンスホールとか、色々なレゲエをやっている人達がいるのをずっと見てきたよ。
――音楽業界について、若い人にアドバイスしてください。
この業界には悪意のある人達がいるということだ。トップにいるビジネスマンたちの中には、腹黒い卑劣な奴らもいるんだ。しかし音楽が純粋に好きな人たちに、私が愛を込めて作ったものを提供し、それを純粋に喜んでくれて愛情を返される気分は、言葉にできないほど幸せだ。そういった愛に支えられてこれまでやってくることができた。