山手線の北東に位置する鶯谷駅。上野駅のすぐ隣の駅で、山手線の乗降客数が最も少ないローカルなこの街に、レトロな雰囲気が漂う東京キネマ倶楽部というイベントスペースがある。
5階のステージフロアと6Fの椅子席で、計700〜800人程のキャパシティの中堅箱。わかりやすく言えば、昭和のバブル全盛期に栄えたキャバレー跡地を使ったイベントスペースだ。
この東京キネマ倶楽部がライブホールの営業15周年を迎えた2015年より、不定期で開催している企画「ヨカノスゴシカタ」で、エクスペリメンタル・ソウルバンドWONKとマルチプレイヤー、河原太朗のソロ・プロジェクトTENDREの2マンによるイベントが開催された。
WONKは1stアルバムをリリースする前から取材しており、現在ではリキッドルーム規模の箱をソールドアウトさせる人気バンドへと成長したが、東京のシーンの最前線をひた走るTENDREとのタイバンが実現する今回、どのようなパフォーマンスが繰り広げられるのか潜入取材を試みた。

圧倒的なパフォーマンスでネクストステージへと誘う
平日木曜の19時スタートだが、前売りチケットはソールドアウト。キネマ倶楽部の1F入り口はチケットを持ったファンで溢れかえり、番号順での入場を待ちわびる長蛇の列が鶯谷駅まで繋がっていた。
19時に公演はスタートし、最初はWONKの登場。
螺旋階段上にある、キャバレー風の垂幕が開き、WONKの4名が登場。ボーカル長塚健斗、ドラム荒田洸、キーボード江﨑文武、ベースの井上幹がスポットライトに照らし出されて、歓声が巻き起こる。螺旋階段からステージに降りてくる時の登場曲として、ディラの曲が流れ、自らのアイデンティティをオープニングからファンへ提示し、相変わらず軸はブレていないと感じる一瞬だった。




今回はWONKの4名に加え、レーベルメイトでもあり盟友のMELRAW(サックス)、竹之内一彌(ギター)、小川翔(ギター)、真砂陽地(トランペット)の4名がサポートとして参加。
ダンサブルなナンバー「Gather Round」から演奏はスタートし、最初からステージのボルテージを一気に上げるメンバーたち。2曲目には、昨年にリリースされた両親との思い出を歌った名曲「Orange Mug」が演奏され、往年の名曲「Midnight Cruise」「Promise」「Dance on the Water」や、EP『Moon Dance』から「Blue Moon」「Mud Puppet」「Sweeter. More Bitter」などが演奏された。
最後にはWONKの代名詞でもある1st『Sphere』から「savior」で締め括られた。ここ数年で新人から中堅の人気バンドへと変貌し、バンドメンバーのスキルも上達し次のステージへと駆け上がっていると感じた。
この日のライブでギター竹之内一彌の圧巻のソロは観客が湧いたときでもあり、その様子がTwitter上に投稿されているので是非チェックを。
唯一無二のTENDREスタイルで観客を圧倒
20時から10分程の舞台転換を挟んで、TENDREが登場。螺旋階段の垂幕が開き、黒のテーラードでキメたTENDREがスポットライトで照らされ、割れんばかりの拍手が起こる。
TENDREはマルチプレイヤーとして独特の存在感を放つ要注目アーティスト。ベースやギター、鍵盤やサックスなど演奏し、様々なバンドやアーティストのレコーディングに参加し共同プロデュースも務めるなど、その活動は多岐に渡る。デビューEPではサンダーキャットの「Them Changes」をカバーし話題にもなった。

WONKのメンバーとは2019年の九州でのライブで初対面したようで、今回のヨカノスゴシカタ5や、来月の2月28日に開催される神戸VARIT.でのタイバンなどで、急接近している両者。どちらもソウルやジャズなど、黒い音楽を根底に持ち、WONKは全曲英語で世界を目指し、TENDREは日本語楽曲でオーバーグラウンドを目指す。
TENDREのバンドメンバーはCRCK/LCKSのリーダー小西遼(サックス)、TempalayのAAAMYYY(コーラス・シンセサイザー)、BREIMENの高木祥太(ベース)、She Her Her Hersの松浦大樹(ドラム)がサポートで登場。どのバンドでも実力を発揮しているメンバーが脇を固め、かなりの強力布陣だ。
デビューEP『Red Focus』からの「DRAMA」からライブがスタート。TENDREの包まれるような歌声と鍵盤に合わせ、AAAMYYYの透き通るようなコーラスが合わさり、一瞬で会場をTENDREの色に染める。東京一多才で技術も高い小西遼のサックス&ボコーダーがさらに冴え渡る。

「DISCOVERY」「Night & Day」、1stアルバム『NOT IN ALMIGHTY』から「NEED」「LATELY」なども披露。メロウでスロウな楽曲群が並び、その非凡なセンスが随所に垣間見ることができた。
AAAMYYYがサポートメンバーでいるので、彼女との曲「KAMERA」も披露された。「KAMERA」は人気の楽曲の一つで会場は喝采に包まれる。その後にもYoutube再生数50万以上の名曲「DOCUMENT」、人気曲の「HANASHI」「RIDE」など演奏されあっという間の1時間だった。
1990年近辺に生まれたアーティストで日本のミュージックシーンの最前線を走り抜ける両者。2020年の幕開けに相応しい素晴らしい1夜となった。先程も伝えたが、2020年2月28日(金)に神戸のVARIT. にて、同じく両者のタイバンがあるとのことで、関西ファンの方は是非足を運んで貰えればと思う。

2020.1.29 (Thu)
ヨカノスゴシカタ5 at 東京キネマ倶楽部
WONK Set List
1. Gather Round
2. Orange Mug
3. Midnight Cruise
5. Promise
6. Blue Moon
7. Dance on the Water
8. Mud Puppet
9. Loyal Man’s Logic
10. Sweeter. More Bitter
11. savior
TENDRE Set List
1. DRAMA
2. DISCOVERY
3. NEED
4. LATELY
5. Night & Day
6. KAMERA
7. DOCUMENT
8. HANASHI
9. RIDE
photos by Ray Otabe (TENDRE), 木原隆裕 (WONK)