松浦俊夫 x Pioneer DJ PLX-500: ファースト・インプレッション・インタビュー
それまでCDJメーカーとしてのイメージが強かったPioneer DJが、2014年9月にプロフェッショナル・ターンテーブル「PLX-1000」をリリースした。アナログ・ブームの再燃と言われ、レコードというフォーマットが再評価されているタイミングでの発表ということもあり、DJ界で大いに話題になった。ところが「PLX-1000」はプロ仕様のターンテーブルということもあり、趣味や仕事でDJ活動を行っている人でないとなかなか触れる機会のない代物であったと言えるだろう。
DJやオーディオ・マニアではなくとも良い音でアナログ・レコードを楽しみたい、という人はたくさんいる。昔聴いていた懐かしのアナログがまた聴きたいという人もいれば、レコードを聴いて育ってこなかった世代だからこそ、レコードで音楽を楽しむというライフスタイルを取り入れたいと考えている人もいるだろう。そんな世間の声に応えるべく、初心者でも気軽に扱えるように設計されたターンテーブル「PLX-500」がPioneer DJから9月16日にリリースされた。
Pioneer DJがこれまで培ってきた経験と技術を駆使し開発されたこのダイレクトドライブ・ターンテーブルは、「PLX-1000」の音質設計思想を基に、さらに幅広いユーザーに楽しんでもらえるために設計されたモデルである。
だが、実際のところ使い勝手はどうなのか?他社のレコードプレイヤーとどう違うのか?そういったことを探るべく、我々は松浦俊夫にPLX-500を触ってもらい率直な感想を伺うことにした。United Future Organization (U.F.O.)の一員として1990年代にクラブ・ジャズというシーンを日本に定着させ、2002年の脱退以降もソロDJとして日本から世界に向けて現在進行形のジャズを発信し続けてきたDJ、松浦俊夫。30年近いキャリアをレコードと共に歩んできた氏は、Pioneer DJの最新ターンテーブルをどう評価するのだろうか?



松浦俊夫から見た、PLX-500の評価とは?
―― まずはPLX-500の第一印象を教えてください。
すごくしっかり造られてるなと思いました。シンプル・イズ・ベストというか、シンプルなもののほうが飽きがこなくて良いんじゃないかと。自分は仕事部屋にターンテーブルがあるんですけど、常にレコードをかけっぱなしにしたいので、それとは別にリビングに置いておきたいと思っていたんですよ。でもリスニング用のターンテーブルでデザイン的にリビングに合うようなものを試聴してみると、音はもうひとつだったりするんですね。見栄え重視というか。PLX-500のような質実剛健であり、なおかつ廉価版というか、入門編として最適なターンテーブルであれば、手軽に良い音で聴けてすごく便利だと思います。初心者の方がこれを最初に手に入れたら、プロオーディオ含めその先に繋がりやすいだろうなと思いますね。
―― PLX-500の特長の一つはUSB-B端子を搭載しているところです。パソコンにUSBケーブル1本で接続して、Pioneer DJが無償で配布している「rekordbox™」 のVer.4.2.1以降を使用する事でレコードの音を簡単に録音することができます。このことについてどう思いますか?
とても便利だなと。データで出てなくてアナログオンリーの楽曲はもちろんアナログで購入していますが、データでも持っておきたいので、こういう機能は便利ですね。レコードをパソコンに録音するということを昔やり始めた当初はすごく試行錯誤をしながらやってました。ですから最初からこのようにデフォルトでできてしまうというのは素晴らしいと思います。
思い入れのあるレコードは徐々にデータ化していきたいと思ってるんですよ。なかなかできていないんですけど。データ量が膨大でもうコンピュータの内臓ハードディスクには入りきらないので、今は外付けのハードディスクに入れています。音楽の図書館を持ち歩いているようなものなので、便利ですよね。50年くらい前のアナログ・レコードをデータで常に持ち歩けるっていうのはすごいことですよね。
昔、PioneerがCDレコーダーを出したときは、「持ってるレコードを徹底的にCD化してやる」っていう気持ちでCDを焼いていました(笑)。
―― また、最新のrekordboxの録音機能の特長として、入力音を検出し自動で録音を開始したり、無音部分を検出して自動的に録音をストップしてくれる機能がついています。
レコードを録音することが面倒くさいという人もいると思うんですけど、そういう人たちにとってもデータ化が楽になるんじゃないかと思います。カートリッジもこだわれば音もいじれるし、拡張しやすいなと思いました。




初心者の使い勝手を考慮したPLX-500
―― PLX-500はライン出力に対応しているため、フォノイコライザーを通す必要なく、直接パワードスピーカーなどに繋げて音を鳴らすことが可能です。レコードは音を出すまでが大変だと思っている人も少なくないのではないかと思いますが、こういった手軽さは初心者にはありがたいですよね。
レコードで音楽を聴くということにまず踏み入れてもらうことが一番大事だと思うので、スピーカーを繋げるなどのテクニカルな部分も簡単にできるようになったら、入り口としてかなり開いている状態だと思いますし、そこから入っていってDJであったり、制作であったりと、可能性が広がっていくと思います。最近はアナログを購入する女性も増えていると聞きますし、そういう意味では省スペースであり簡単に音を鳴らせるこういったターンテーブルは必要なんじゃないでしょうか。
―― そうですね。実際、プロ向けではなく誰でも気軽に扱えることを念頭に置いたターンテーブルが増えてきているように思います。そういったターンテーブルに求められるものとは何だと思いますか?
見合った音質は必要ではないかと思いますね。ある程度低価格だとデザイン優先になりがちだと思うんですよ、全体的に見て。だからプロ仕様のオーディオとか、DJ機器を扱っているところがこういった入門用を出したというのは大きいと思います。自分が若いときは何もなかったので、プロ用を買うしかありませんでしたが、もしこういった物があったらもう少し気軽に機材を入手することができ、そのぶんソフトである音楽を入手する手段にお金をかけることができたんじゃないかと思います。
Photos by Tsuneo Koga
PRODUCT INFORMATION
PLX-500 K (Black) & W (White)


- 発売日:2016年9月16日
- 価格:オープンプライス
- SPECS
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- ・幅: 450 mm
- ・高さ: 159 mm
- ・奥行き: 368 mm
- ・本体質量: 10.7 kg
- ・駆動方式: サーボ式ダイレクトドライブ
- ・ターンテーブル: アルミダイキャスト 直径:332mm
- ・モーター: 3相ブラシレスDCモーター
- ・ブレーキシステム: 電子ブレーキ
- ・回転数: 33⅓, 45, 78 rpm
- ・回転数調整範囲: ±8 %
- ・ワウ・フラッター: 0.15 %以下WRMS
- ・S/N比: 50 dB
- ・起動トルク: 1.6 kg・cm 以上
- ・起動時間: 1 秒以下 (33⅓ rpm時)
- ・トーンアームタイプ: ユニバーサルタイプS字型トーンアーム / ジンバルサポート型軸受構造 / スタティックバランス型
- ・カートリッジ: VM
- ・出力端子: 1 PHONO/LINE (RCA)
- ・USB: 1 USB B port
More Info: Official Site / Official Shop
ARTIST PROFILE

TOSHIO MATSUURA
1990年、United Future Organization (U.F.O.)を結成。日本におけるクラブカルチャー創世記の礎を築く。12年間で5枚のフルアルバムを世界32ヶ国で発売し、高い評価を得た。独立後も精力的に国内外のクラブやフェスティバルでDJ。さらにイベントのプロデュースやファッション・ブランドなどの音楽監修を手掛ける。2013年、4人の実力派ミュージシャンとともに、東京から世界に向けて現在進行形のジャズを発信するプロジェクト”HEX”を始動。Blue Note Recordsからアルバムをワールドワイド・リリース。InterFM”TOKYO MOON”(毎週水曜23:00)好評オンエア中。
http://www.toshiomatsuura.com/
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松浦俊夫がPLX-500のリスニングに選んだレコード5枚
- - デ・ラ・ソウル 『And The Anonymous Nobody』LP
- - ケイトラナダ 『99.9%』LP
- - バッドバッドノットグッド 『IV』LP
- - ソンゼイラ 『Tam Tam Tam Reimagined』LP
- - ジャイルス・ピーターソンズ・ハバナ・カルチュラ・バンド 『La Rumba Experimental (Motor City Drum Ensemble Remix) / Weird Melody (Max Graef & Glenn Astro Remix)』 12″
いつまでも変わらないスタイルがよいっす。