20年以上のキャリアを持つベテラン・キーボーディスト/コンポーザーが、これまでの自身の軌跡を振り返り、そのなかで生んできた音楽を再構築して、このアルバムを創作した。簡単に結論をまとめるなら、フェンダー・ローズと改めて対峙しながら、自身のクリエイティヴィティーを作品のなかで実直に表現した、という感じだろうか。ニューヨーク・ジャズの伝統を受け継ぎながらも、かつての同輩ロイ・ハーグローヴとも近い感性と言えようか、より革新的なサウンド志向を見せてきたマーク・キャリー。16年前にリリースした本シリーズの前作『Rhodes Ahead Vo.1』はプログラミングが用いられたハウシーな内容だったが、今回はスムーズで煌びやかなフェンダー・ローズの音色に、ハウスやテクノやアフロやヒップホップやエスニック音楽の影響を絶妙に溶かし込んでいて、的確に表現できる言葉が見つからないが、クロスオーバーでミステリアスでコズミックな音楽性が楽しめる。
前作では「いわゆる“ジャズ警察”に抑圧されてきた私の仲間たちの創造性を、大きな音楽のコミュニティーに届けたかった」とマークは話すが、もしその考えが今のロバート・グラスパーやフライング・ロータスにまで到達していると想定すると、あの作品が持つ意味とこの音楽家の存在はひときわ重要なものになる。それに続く本作『Rhodes Ahead Vol.2』も重要な意味を持つ作品だと言えるし、前作がそうであったように、向こう10年のジャズの流れを占うアルバムになったとしても不思議ではない。ともあれ、ジャズの広く深い懐のなかではジャンルという概念さえも意味を持たないと改めて思わせる本作は、間違いなく、緻密に繊細に生み出された、マーク・キャリーの創造性の結晶だ。
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